vol.02 つながる奄美の運動会
“Amami”はイタリア語で「私を愛して」という意味。
そう、奄美には愛さずにはいられない魅力が溢れています。
自然、食、人etc.、愛すべき奄美の魅力を島人の目線でお届けします。
奄美で自慢できることって何でしょう。
世界自然遺産候補の美しい自然。知れば知るほど興味深い文化や歴史。
どれも一級の自慢になりそうですが、私は「人」も忘れないでほしいと思います。
「人とのつながり」や「島への想い」をとても大切にする奄美の人々。
今回は、そんな島の人たちが大事にしている集落行事のひとつ「運動会」のようすをお伝えしたいと思います。
運動会が行われるのは、夏の蒸し暑さが和らぎ、日に日に涼しくなっていく9月から11月。
奄美大島では、学校や地域単位で毎週のように運動会が続きます。
私の住む奄美大島でも、子供たちをはじめ、20〜60代、ときには80代のおばあちゃんが選手になって参加する、地域ぐるみの運動会が行われました。
いくつかの学区にわかれて優勝を競い合うこの運動会は、一年に一度、町民が競技をとおして交流を深める場所。
「はげ〜、きつい〜!」「膝ガクガク」
などともらしながら、本番直前まで練習に余念がない大人たち。
「はげ〜」とは、奄美の言葉で「あらまぁ!」「ああ!」といった驚きをあらわす言葉で、呆れた時や嬉しい時、怒った時などにも、つい口にしてしまう言葉のひとつ。
驚きすぎた時は、「はげ、はげ、はげ〜!」なんて使い方をします。
(けっして頭のことを言っているわけではありません。)
運動会の種目は、100m走をはじめ、ムカデ競争、玉入れ、輪投げ、ホールインワン(グラウンドゴルフ)など実にさまざま。
どれも種目ごとに出場できる年齢が決まっています。
そのなかで、40代から出場できる、ちょっと変わった、島ならではの競技をご紹介しましょう。
奄美の伝統的民具「テル」を使った競技です。
「テル」とは、奄美の人たちが昔から自分たちで手作りし、畑仕事などに使って来た竹製のカゴのこと。
本来は芋や貝などを入れて運ぶためのものですが、運動会ではバトンがわりとして使います。
競技の名前は、「夫婦相和し(あいわし)」
夫婦でしか参加出来ないこの競技は、一人がボールを投げ、もう一人が背負ったカゴの中にそのボールを入れるというもの。
ボールは3mほどの高さに張られたロープを越えなければならず、一度で見事にボールをカゴに入れるベテラン夫婦もいれば、ボールをヘディングしてしまい苦戦する新米夫婦も。
どちらにしても、観覧席からは、
「夫婦の年季が違う〜!」
「コミュニケーション、足りてないんじゃない〜笑」
などと、からかいの野次がとび、会場は大爆笑の渦。
ボールを入れ終えたら、夫婦仲良く手をつなぎ、次の夫婦へ「テル」を渡してゴールイン!
やってる本人たちは、なんとも気恥ずかしい競技なのですが、笑顔はとっても幸せそう。
見てる方も、近所の知り合いが出てるからこそ盛りあがります。
人どうしの距離感が近い、奄美ならではの種目だといえます。
運動会は最後に「地区対抗リレー」でさらに盛りあがり、閉会式をして無事終了。
夜は地区ごとにわかれての懇親会がまってます。
焼酎片手に運動会でのワンシーンを振り返り、世間話しに花を咲かせるのは毎年恒例の楽しみ。
昔は「地域の運動会」を、町内あげて盛大にやっているところが、日本全国に結構あったそうですが、近頃は過疎化の影響か、参加する人が少なくなり、こういった地域の行事が運営しにくくなっているところもあるようです。
お互いの絆を深め、地域の「つながり」を豊かにしてくれる島の数々の行事は、地域コミュニティの潤滑油。
この先もありつづけて欲しいと願う、奄美の大切な風景のひとつです。
【プロフィール】トウコ
関西出身。縁あって奄美で結婚。転勤族の夫と供に奄美群島各地を回り、2015年奄美大島に落ち着く。奄美の島々を回るうち、各地の風土・風習・歴史の違いに強く惹かれ、大好きな絵や文を通じて、その魅力を発信していきたいと思うようになる。