vol.23 甘くてアツい季節

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“Amami”はイタリア語で「私を愛して」という意味。
そう、奄美には愛さずにはいられない魅力が溢れています。
自然、食、人etc.、愛すべき奄美の魅力を島人の目線でお届けします。

南の島のイメージの割に、意外と寒い奄美の冬です。雨も多くすっきりしない日が多いのですが、実はアツい季節なんですよ。
笠利の道路を走っているとこんな落とし物を見かけたことはありませんか?

道の上の落とし物。笠利町内、あちらこちらに落ちています。

主にカーブの周辺に落ちています。
細い竹のようで、中が詰まっていて、短く切られた植物。
日常的にはあまり目にしない植物ですよね。
これがアツい季節の主役!そう、サトウキビです。
冬の奄美は製糖シーズン。島最大の製糖工場が動きだすのです。

昔ながらの製糖についてはこちらをご覧ください。

赤木名伝泊の近く、スーパーの向かい側にあるこの工場には、この時期、製糖を待つサトウキビが山と積まれています。

山はもっと高い日も。

比喩ではなく本当に山!重機との対比を見てください。遠近法ではありません。
この時期は、畑でハーベスターと呼ばれるキビ刈機がフル稼働。

大きさの対比がないのでわかりにくいですが、このネットで高さが1m以上あります。

キビをトラックに満載して工場に運ぶのですが、これが目いっぱい積んで走るので、カーブを曲がる際に上の方のキビが道路にこぼれ落ちるのです。

工場では運び込まれたサトウキビを粉砕し、絞ってジュースにします。

絞ったサトウキビジュースを巨大なタンクで煮詰めています。

 

砂糖の結晶を見せてくれました。

それを煮詰めて砂糖が作られますが、こちらで作るのは、黒糖と、粗糖と呼ばれる段階まで。黒糖は島内で黒糖焼酎の材料となり、粗糖は船で福岡の工場に送られ、精製されて市販されているような砂糖となります。

完成した黒糖を小分けに箱に入れています。作業をしている人の横にあるダクトのようなものから黒糖が落ちてきます。

何もかも規模が大きいので工場内はベルトコンベアが大活躍。
サトウキビを工場内に運び込むのも、出来上がった黒糖を箱詰めするときにも、ベルトコンベアがゴウンゴウンと動き続けます。

ベルトコンベアに乗って工場内へ。なんだか楽しそう。子供目線で見たらまるで遊園地ですね。

夜を徹した製糖工場の稼働は奄美の冬の風物詩。観光客の減少する冬場の貴重な出稼ぎ先でもあります。
今年は台風の直撃がなかったので豊作だそうですよ。

余熱でお風呂まで沸かしちゃってます。

 

完成した粗糖。こちらも山!

今日の共通歌詞、と思ったのですが、砂糖ひき(製糖)というとまずイメージするのがこちらだったので、今日は共通歌詞ではなく、油だらだらという曲の固有の歌詞です。

「油だらだら 風浪主(かずらんしゅ)ハレ 馬(ま)がれぃ持(む)たしゅて砂糖(さた)ひきゃよーハレ 及ばらぬマゴジョメくゎーハレ ねんごろしろしろちーやしょりゃ」

油だらだら風浪主(人名)はわざわざ馬まで持たせて砂糖車をひかせているよ。手が届かない相手なのにマゴジョ(女性の名前)の気を引いて、妾にしようとしてるのさ。

歌詞の後に「バカな男さ」とセリフが入りそうな曲です。そこまでして気を引きたい相手をトゥジ(妻)ではなくネンゴロ(妾)にしようとしている辺り、揶揄されて当然というかなんというか……。

油だらだらは八月踊りの曲の中でもちょっと異色な曲です。単独で唄われたりもしますが、私の住む集落では、東明雲(あがれあきぐも)のくずしで入ります。
くずしというのは、唄っている曲を盛り上げて速くするために唄われる、別の曲です。メドレーのような感じですね。どの曲でくずすかは集落によって違っていて、くずさずにそのままの曲で速くなったり、ひとつでは飽き足らずさらに別の曲に移ってどんどん速くして盛り上げたりします。

※八月踊りの曲名や解釈は、私の住む城間集落のものを基本としています。言い回しや解釈は集落によって変わることをご了解ください。

【プロフィール】渋谷陽子
宮城県出身。2011年6月に奄美へ。
現在笠利町で夫と共にパッションフルーツ農園を営んでいる。
音楽、伝統行事、古くからの習俗、和服が大好きなオカリナ奏者兼業農家。
まるか農園 「まるかの明日」
https://amantropico.amamin.jp/

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