vol.22 正月飾り

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“Amami”はイタリア語で「私を愛して」という意味。
そう、奄美には愛さずにはいられない魅力が溢れています。
自然、食、人etc.、愛すべき奄美の魅力を島人の目線でお届けします。

今年も残りわずか。お正月の支度はおすみでしょうか。
というわけで、今回は奄美のお正月飾りをご紹介します。

奄美の正月飾り。作り手は後継者不足だそうです。クリスマスが過ぎると、スーパーやホームセンターに並びます。 写真のように輪にして飾るほか、左右を広げて飾る家もあります。

奄美の玄関飾りは、しめ縄です。去年作り方を教えてもらったんですが、写真は市販の飾りです。
市販とはいえ、手作り品。11月ごろから地道にひとつずつ手作業で作られています。
まっすぐな藁をきれいにそろえ、たばねて上からつるします。それを3つに分けて、ひねりながら編んでいきます。2人でもできますが3人いると作業が楽になります。
つるした藁をそれぞれが持ち、ひねりながら隣の人に手渡し、受け取る、をぐるぐるぐるぐる繰り返します。藁が短くなったら新しい藁の束をたして中央が太くなるように編みます。
本体が編みあがったら、少量の藁をふたつ折りにして、「祝福寿」の判子をおした紙垂でくるんで3箇所にさして、ダイダイとウラジロを飾って完成です。

ウラジロは葉の裏が白いシダです。昔、鬼に追われたときにウラジロがたくさん生えているところに隠れて命が助かったという故事があり、縁起の良い植物とされています。 鏡餅の下に敷かれたり、門松に飾られたり、正月には欠かせないものです。笠利周辺ではほとんど見かけなくなりました。こちらもお店で売られています。

しめ縄は買ってくる家がほとんどですが、今でも自作する家が多いのが門松です。門松には真竹ではなく、ガラデとよばれる細めの竹を使います。ガラデの方が丈夫で長持ちすると言われていて、昔はこの竹で釣竿も作ったそうですよ。

ガラデは、輪切りにしたときにまん丸ではなく、少しへこんだ部分があるのが特徴。節ごとに反対側にへこみが出ます。

門の横に海砂を盛り上げてそこに採ってきた松と竹とユズリハとウラジロを刺して飾るシンプルさ。素朴な風情が奄美らしいなと思います。

ユズリハは、親から子へ代々譲る、という意味が込められています。葉柄が赤くて美しいのですが、今年は赤が薄いようです。あまり寒くない気温が影響しているのかもしれません。

奄美の松はリュウキュウマツでしょうか。近年松くい虫で随分少なくなりました。それでも、少し探すと道端や荒れ地に若い松が生えています。

こちらに来たばかりの頃、なぜ民家の門の周辺に砂が盛られているのか不思議だったんですが門松の名残だったんですね。最近ではもっと手軽に植木鉢に砂を入れて、飾りの草木をさしている家もよく見られます。

奄美式門松。年末になると松や竹を採って歩く人を見かけるようになります。松ならあそこの松が!というねらい目スポットがあり、荒れ地に採りに分け入る人を見かけたりします。もちろん、ハブには要注意です。

今日の共通歌詞。今回はふたつ一緒にご紹介します。
「行こ行こにすれば後惜(あとめ)ささやすが 居ろ居ろ(うろうろ)にすれば 義理ぬ立たぬ」

行こう行こうとすれば後ろ髪ひかれて行き難い。だからといって行かずにそこに留まっていれば義理が立たない。

「有難(うぶくれ)ど言(いや)りょる 果報者(かふしゃれ)ど言(いや)りょる 来年(やね)ぬ稲神(いにがなし)畦枕(あぶしまくら)」

ありがたいことです。とても恵まれたことです。来年の稲神様、実った稲穂がたれて畦道を枕にするほど豊作でありますように。

八月踊りには、暗黙の了解がいくつもあり、そのひとつが終わりの歌詞です。通称「いこいこ」と呼ばれるこの歌詞は終わりの合図。

私の住む集落では、「いこいこ」が出たら次にこの「うぶくれ」を出して「トーザイ」の掛け声がかかります。
男女のどちらかが早く終わりたくて「いこいこ」を出すのに、もっと歌いたい他方は「うぶくれ」を出さずにほかの歌詞に移る→「いこいこ」→ほかの歌詞→あきらめてその歌詞の対の句、なんてやりとりがあったりして、この約束ごとがわかっているとおもしろいですよ。

ありがたいことに、一年を平穏に過ごさせていただきました。
来たる年が豊かな年でありますように。

とうとがなし。


【プロフィール】渋谷陽子
宮城県出身。2011年6月に奄美へ。
現在笠利町で夫と共にパッションフルーツ農園を営んでいる。
音楽、伝統行事、古くからの習俗、和服が大好きなオカリナ奏者兼業農家。
まるか農園 「まるかの明日」
https://amantropico.amamin.jp/

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