伝泊

vol.24 宝の海

“Amami”はイタリア語で「私を愛して」という意味。
そう、奄美には愛さずにはいられない魅力が溢れています。
自然、食、人etc.、愛すべき奄美の魅力を島人の目線でお届けします。

奄美では潮の引いたリーフに出る漁がよく行われます。昼がイショまたはイショアシビ、夜をイザリと言い、11月から2月がイザリのシーズンです。3月以降、特に旧暦の3月3日はサンガツサンチと言い、イショに出る文化がありますが、今回はイザリについてご紹介したいと思います。

満月の海 ライトは必要ですが、意外なほど明るい海です。

満月と新月をはさむ数日間、大きく潮の引く2~3時間前にリーフに出かけて獲物をとり、潮が満ち始める前に戻ってきます。イザリ好きの島人たちはこの季節になると潮見表とにらめっこをし夜のリーフへ繰り出します。

夜のリーフを歩くイザリは本当に幻想的。例え月明かりがあってもそこは暗い海です。しかもリーフはサンゴが成長を続けた結果できた足場なので、魚の捕れる先端の方に行くと、その下には空洞がたくさん存在しています。そのためドドーンと波がぶつかり、ざざぁ~っと空洞を行き来する音が足の下から聞こえて来るのです。あちらこちらに隙間が口を開けているので、そこをライトで照らして獲物を探します。

イザリで獲得した海の恵み モクズガニ、コデネバリ、タコなど。

防風防寒着、ヘッドライト、イビラク、持ち手の長いヤス、スパイク長靴というのが基本装備。イビラクは奄美独自のカゴで、畑仕事で使われるテルよりもひと回り小さく、主に海で使われます。

イザリの道具 各自色々工夫します。2mもあるヤスの柄はガラデ(コサンダケ)で自作。

イザリではたくさんの生き物たちに出会いますが、夜の海で出会うタコの美しさは独特です。

タコ=赤いと思っていませんか?海の中で生きているタコの体は透明感がありゆらめく水の色のようです。そして、体の形や色を変化させて砂や魚になりきります。

夫が先日のイザリで見かけたという3匹がそれぞれ三様で美しいものでした。

1匹目は体をひゅーっと細くのばして泳いでいました。海ヘビのつもりかな?赤い地に白の斑点模様です。

2匹目はサンゴに擬態。8本の足を左右対称にくるりと巻いて、青みを帯びゴツゴツしたサンゴになりきっていたのですが、左右対称なサンゴ、というのは妙ですよね。「ぼくサンゴ」と主張してそうです。
3匹目は砂に擬態。白っぽい色でしたが、ふちに波にゆらめく月光のような青い輪郭が見えていました。

タコの擬態は慣れないとなかなか見分けがつきませんが、ヤスを突き刺すと、それまで砂にしか見えなかったものが急にうねうねと動き出し、全く違う色形に変わります。魔法がとけたかのような瞬間です。

マツカサガイ 岩場に張りついています。バター炒めやパスタにするとおいしいですよ。

コモンヤドカリ、テゴサエビ(ゾウリエビ)、お馴染みモクズガニとィユ(魚)各種 ヤドカリは貝から出すのに一苦労。でも苦労が報われるおいしさです。

ホラガイ 上の写真でヤドカリが入っていたのは実はホラガイです。きれいに磨いて先端を切ったらこの通り。金管楽器を吹く要領で音が鳴ります。

今日の八月踊り歌詞。

今回も共通歌詞ではなく固有の歌詞からご紹介します。「ねんごろ女」より。

 

「イビラク忘れてや ハイソーラー妾女(ねんごろじょ)が宿に 向(む)こじサイすきゅん時(どぅき) 思(おめ)出じゃし スラヨイヨイ」

 

 

妾のところにイビラクを忘れてしまった。妾宅を出てエビをすくおうとしたときになって思い出した。

 

これはアレですね。「エビを採りに行ってくる」と言って家を出て妾宅に行き、帰りにアリバイ工作のためにエビを採ろうとしているシチュエーションですね。しかし肝心のカゴを忘れた、と。この、おバカだけどどこか憎めないヌケ加減。まるで落語の登場人物です。

この唄、更にトックリやら三味線やら色々なものを妾宅に忘れます。
忘れすぎでしょ。

【プロフィール】渋谷陽子
宮城県出身。2011年6月に奄美へ。
現在笠利町で夫と共にパッションフルーツ農園を営んでいる。
音楽、伝統行事、古くからの習俗、和服が大好きなオカリナ奏者兼業農家。
まるか農園 「まるかの明日」
https://amantropico.amamin.jp/

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